キッチンの間取りの基本を知ろう
はじめに、キッチンスペースの間取りを決めるときに覚えておきたい、基本の考え方をご紹介します。重視すべきポイントを知ることで、快適なキッチン空間をつくることができます。
キッチンの型で変わる家事動線
家事動線は、キッチンの型によって決まるといってもいいでしょう。例えば、I型の壁付けキッチンであれば冷蔵庫をシンクの横に配置するのが一般的ですし、キッチンが壁から独立しているアイランド型なら、コンロやシンクの並びではない場所に冷蔵庫を置くことになるでしょう。その配置によってキッチンスペースにおける家事動線が決まり、調理や作業のしやすさが変わってきます。理想とする間取りがあるのであれば、キッチンの型も慎重に選ぶ必要があります。
ワークトライアングル
キッチンスペースの間取りは、空間内の動線を考える際に使われる“ワークトライアングル”を意識して検討しましょう。
ワークトライアングルとは、①コンロ、②シンク、③冷蔵庫の3点を結んだ家事動線のことです。それぞれの距離は1.2m以上が理想で正三角形に近いほど効率が上がるといわれています。1辺1.2m以上の三角形ができるようにキッチンと冷蔵庫を配置して、作業の効率を上げましょう。
通路の幅
キッチンスペースの間取りを決める際には、通路の幅を考えることも重要です。キッチンスペースの面積に対して大きすぎるキッチンを入れてしまったり、家具や家電を置きすぎたりすると、通路が狭くなります。調理中でも家族が後ろを通れる程度の空間づくりを意識するといいでしょう。
キッチンの型のメリットとデメリットについて
キッチンスペースの顔となるキッチンには、さまざまな型があります。それぞれの特徴をよく知ることで、間取りを決める際の失敗を防ぐことができるでしょう。ここからは、キッチンの型ごとのメリット・デメリットについてご紹介します。
I型(壁付けタイプ)
壁付けタイプのI型キッチンは、コンパクトでシンプルなデザインなのが特徴です。作業スペースを確保しやすく、家事動線も直線的になるため、使いやすいスタイルといえるでしょう。
ただ、キッチンが横に長すぎるタイプや物を置きすぎると、横に移動する距離が長くなりかえって使いづらくなります。日本では多く見かけるスタイルですが、調理の最中はリビングやダイニングに背を向けることになるため、家族とコミュニケーションをとることが難しくなります。キッチンを独立させて、作業に集中したい方に向いているといえるでしょう。キッチン自体が幅を取らない設計であるため、キッチンスペースに使える広さが限られている住宅にもおすすめです。キッチンとリビングを空間的に分離することで、急な来客でも慌てずに対応できるというメリットもあげられます。
ダイニング側に腰高の造作壁を作り、ダイニングと対面する向きにI型のキッチンを設置すると、比較的低コストで対面式キッチンを実現することができます。対面型をキッチンを希望する場合は、キッチンダイニングの間取りと合わせ、設計士に相談してみましょう。
L型
作業スペースが広く、一度に数人でキッチンスペースに立っても使いやすいのがL型の魅力です。家事動線もスムーズですし、I型と同じくキッチンの後ろにスペースができるのもメリットといえるでしょう。ただし、キッチン自体が大型となるため、スペースが限られたキッチンには設置できません。また、キッチン自体が高額になるケースがあります。建築費用やリフォーム費用全体の予算に合致するかの検討が必要です。
家族や友人と一緒にキッチンスペースに立つ機会が多ければ、大きなL型キッチンにすることで、快適に調理が行えます。システムキッチンでも、コンロやシンクの位置を自由にカスタマイズできるものもありますので、冷蔵庫を置く場所を考え、ワークトライアングルを意識してコンロとシンクの位置も決めましょう。
アイランド型
壁に接することなく、島のように独立した形のキッチンがアイランド型です。キッチンの左右どちらにも壁がないため、キッチンからリビング、キッチン空間からダイニングなどへの移動がスムーズになります。アイランド型は対面キッチンになりますので、家族とのコミュニケーションもとりやすくなります。ダイニングと一体にすると、料理を運ぶ手間も省けるでしょう。
スタイリッシュなアイランド型は、キッチン空間をインテリアとして見た場合も優秀です。ほかの型のキッチンよりも存在感があります。友人や知人をよく自宅に招いて手料理を振る舞う方、子どもとコミュニケーションをとりながら料理をしたい方におすすめです。カウンターをつくることで、まるでバーのようなおしゃれな雰囲気を演出することもできます。
ただし、アイランド型はリビングやダイニングと壁を隔てていないため、水はねや油はねなどに注意が必要です。こまめに手入れを行い清潔に保つことで、キッチン全体にも清潔感が出るでしょう。また、通路を広くとりすぎると冷蔵庫とシンクの位置が遠くなってしまう点も注意が必要です。
最後に自分の理想をプラス
間取りに失敗しないための基礎知識を覚えたら、次は間取りに自分の理想を入れ込んでみましょう。パントリーをキッチンスペース横につくったり、洗濯場などの家事室をつないで家事動線をコンパクトにしたりするのもおすすめです。システムキッチンを自分の思い通りにカスタマイズしてもよいでしょう。
キッチンに機能性をプラスすることで、さらに使い勝手のよいキッチンスペースができあがります。ビルトインタイプの食洗器をつける、大型の壁面収納をつくる、手の届かない場所には収納をあえてつくらないなど、自分なりの使いやすさを考えてみてください。
キッチンスペースの間取りを考える際には、窓の位置も重要なポイント。窓の位置によって風通しや採光に差が出るため、明るく清潔なキッチンで料理を楽しみたいのであれば、設計士とよく相談しましょう。
家族と暮らしに寄り添った間取りを考えよう
使いやすく快適なキッチン空間にするためには、家事動線を意識した間取りを考えることが大切です。また、作業のしやすさだけでなく、家族とコミュニケーションがとりやすくなる工夫も取り入れましょう。先述の通り、アイランド型のような対面キッチンにすることで、食事を運んだり、食器を片付けたりといった作業も楽になります。
キッチンスペースとダイニングをリビングから隔離したい場合には、I型やL型キッチンを選び、キッチンの背面側にダイニングスペースを設けることも可能です。家族の理想の暮らし、ライフスタイルにあわせたキッチン空間の間取りを考えましょう。